私に恋を教えてくれてありがとう【下】
先生は気付いただろうか。



…………私の目に何も浮かんでいなかったことを。



視界はおぼろげなのだけれど

何も出てこない。


ただ生まれたのは華子の中の酷く荒れ狂う生き物。



餌はあの言葉。


明確だ。



私はただガラスに映る自分を見ていた。


淡々と時間は流れ牧田はもう何も発しなかったが

彼のやや荒い溜息

頭をかく仕草が度々分かった。



……彼の姿がガラスに映っているのだから……。


もう以前とは違う。

そんな哀愁を漂わせたところで華子の気持ちが萎えることはないのだ。


だってあの言葉を聞いてしまったのだから…………。




時は19時を回っていた。


牧田は深い深い溜息を洩らし仕方なしといった感じでサイドブレーキを下げエンジンをかけた。



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