私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は自分の手が変色し、
気血が悪くなっていることに気づいた。
「金井さん!」
華子はその力に抗ったが
金井は変わらずにんまり笑い続け
華子の中で厭わしさがにおってきた。
こんなときに限って職員は誰一人と通らない。
華子は金井の握力と他の何かを感じながら
周囲を目端でうかがった。
声や気配はあるものの
ここはちょうど廊下突き当たりを曲がった場所で
どうやら死角らしい……。
そんな華子の様子をご満悦に眺めながら
金井は口を細く開いた……。
「“華子ちゃん”……」