私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「……私を
……守ってくれてた?」
牧田から傘をそっと受け取った。
この涙を金井か、雨のせいにしたい。
どうかこの暴れる鼓動を動悸にしておいて欲しい。
ヒビの入ったこの殻をどうか破らないで欲しい!!!
そう願っても華子の瞳は切なく燃え
牧田の年を重ね垂れた瞳を焼きつくし
流れる涙は彼の少ししゃがれた手を誘い
白い手とやわらかで上気した頬は
涙を拭う手を捕え
彼の袖から香る家庭の香りに誘われた
甘い吐息は
彼の何もかもを誘惑した。