私に恋を教えてくれてありがとう【下】

「……私を


 ……守ってくれてた?」



牧田から傘をそっと受け取った。



この涙を金井か、雨のせいにしたい。




どうかこの暴れる鼓動を動悸にしておいて欲しい。





ヒビの入ったこの殻をどうか破らないで欲しい!!!











そう願っても華子の瞳は切なく燃え






牧田の年を重ね垂れた瞳を焼きつくし






流れる涙は彼の少ししゃがれた手を誘い





白い手とやわらかで上気した頬は






涙を拭う手を捕え







彼の袖から香る家庭の香りに誘われた






甘い吐息は







彼の何もかもを誘惑した。




< 58 / 355 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop