私に恋を教えてくれてありがとう【下】
華子は視線を来た道へ移し







……この道を金井と一緒に歩いていたんだ……






毎日一緒だったのか?





牧田も私をつけていた?





混線し、視線は足元の雨水を飲み込む排水溝へ




一緒に呑まれ、





今や体まで呑まれそうになっていた。









牧田の大きな手が辛くもそこから華子を救いだし




いつの間にか手から滑り落ちた傘を拾い上げ



容赦ない雨粒からをも彼女を救った。







「だから車にいなさいと言ったでしょう」




牧田は灰を被った頭に銀色のしずくを沢山あしらい


先ほどまでからっとしていた白い薄手のジャケットに


妙なグラデーションをつけていた。






そんな姿のまま華子にだけ傘を差し出し


いつもの酷くやさしい手つきで頭を撫でるのではなく


溜まっては頬をつたうものを取り払う。




分かっている。




牧田は後をつけていたのではない。



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