私に恋を教えてくれてありがとう【下】
「それでは薬はこのままで

5週間分針とチップをお出しします

 ……1日2回5週間分」


「はいっ

 アルコール綿はまだ足りますか?」


華子は先生の指示に従い
患者に問いかけながら手際よくビニール袋に自己血糖測定用の針とチップを詰め込んだ。



「あぁ!そうだった!

 ひとつください!!」

白髪で焼きたてのおもちみたいなイボを頬に持った

優しそうな男性は、あわあわと華子に頼んだ。


「はい、ではこちら

 アルコール綿と5週間分です」


片手を添えて丁寧に渡し

ドアを開けた。


「お大事にして下さい」



もちろんいつもの

朗らかなサービス付きで見送った。



イボな男性はありがとうと最敬礼を華子と先生に送り

会計へ向かっていった。


華子はそっとドアを閉め

溜まった検査結果を早く書こうとカウンターへ小走りしようとしたところ

「書くのはやいですね」


先生がしみじみ言った。




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