私に恋を教えてくれてありがとう【下】
この“大島先生”は大学病院の先生で

ここへは非常勤として来ている

若く、この院内で誰よりも背の高い

せわしない人間。


今は椅子に座っているからピンとこないが

大地震が起きても机の下に
隠れることは出来ないだろう程の長身だ。


この論駁好きな青二才は

豊かな黒髪をブローなしで波立たせていて

よりいっそ凛々しくみせる銀の上縁眼鏡が奇妙に似合っている。


眼鏡をかけて生まれてきたのだろう。



「私のペースでこんなにカルテが積まれているのは稀ですね」


あっさりしたバリトンの声を響かせた。

机の左脇に積まれたカルテの山はぱっと見30センチ程

それを大島先生は大きな手を広げ

親指と小指の間隔で

山の高さはどれ位かとはかった。




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