紙飛行機が届けた詩



うっわ…最悪…


眼鏡控室に忘れた。





おれは今、シャワールームにいる。


ライブ前に用意して置いてあった、"城谷さん"の服に着替える為だ。





ワックスでセットされた髪を洗い流し、メイクも落として"帝"から"城谷さん"になり、安心していたところ、眼鏡がないことに気が付く。



ライブ終了から10分経過している。


まだ彼女達が控室に来てないことを祈り、眼鏡をかけずに廊下を駆け抜ける。







控室前。

そっと扉に耳を当てる。



よし、まだ来てない。




-ガチャ



「お疲れ」



「おー、おつ」



虎牙はひらひらと左手を振る。


私服に着替えたようだ。
ソファーに座り、携帯電話をいじっている。




「お疲れ。眼鏡してないじゃん」




虎牙と向かい合う位置に座っている龍が、読んでいた本から顔を上げ、声をかけてきた。



「あぁ、ここに忘れたんだ」




「ドンマイ」



大和がおれの背中を叩く。


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