足跡たどって

「・・すみません。」

無条件降伏した私は、大人しく一平ちゃんの背中に乗った。

その後、しばらくは、二人共黙って歩いてけれど、やがて一平ちゃんが、ぽつりと言った。

「さっきの花ちゃん、まじ必死だったよね。」

「さっき?」

「うん。俺のこと、お化けかと思って殴ってきた時。俺、殺されるかと思ったもん。」

だんだん一平ちゃんの体が、震えてくるのが、伝わってきた。

「別に笑い堪えなくていいよ、一平ちゃん。どうせ、私は、馬鹿ですから。」

私の言葉にとうとう耐え切れなくなったのか一平ちゃんは、笑い始めた。

「本当に命の危険を感じたんだからね。」

言い訳がましく言ってみると、一平ちゃんは、頷いた。

「知ってるよ。小三の時、町内の肝試し大会で大泣きしてたもんな。」

「よく覚えているね。あの時は、飯島さんちの恵美姉ちゃんが、本物みたいに怖かったから。」

今でも夢に見るほど怖かったなんて言ったら、もっと笑われそうだ。

「確かに恵美さんの口裂け女は、怖かったな。俺でも結構驚いた気がする。」

私と一平ちゃんは、出口までずっとそんな昔話をしていた。

その間は、なぜか全然怖くなかったし、一平ちゃんの口調が昔みたいに乱暴な感じに戻っているのも無性にうれしかった。

出口が見えたとき、実は、ちょっとだけもう少しお化け屋敷が続けばいいのにとか思ってしまった自分もいたり・・。
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