夕凪の花嫁
風がやんだ国
風のない国は、死の国と同じだった。



風が吹き渡る事で、生命を与え育み潤っていた国も今では、緑や花は枯れ――風の国の守護鳥とされ大事にされているまほろの鳥は、今では飛ばなくなった。



乳白色の長い髪に飾られていた桜も枯れ、少女は小刻みに肩を震わせながらそれを手で掬う。



「天多(アマタ)に貰った大切な花……いつも、傍にいてくれたのに」



少女の泉のように澄んだ瞳から涙がぽろぽろ零れ落ち、大地に染み込んでいく。



風の国はもう終わりだと、少女は思った。



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