優しい雨
「だって、文句を言う相手なんていないもの」

「そうやって今の状況を当たり前のように受け止められるなんてすごいよ」

何だか褒められているような気もするが、私は何がすごいと言われたのかよく分からない。

しかし取り敢えず「ありがとう」と言った。

ビールを飲む彼の姿が男らしく見える。

私はやはり、ちょっとおかしい。

こんな時間に押しかけて、彼を見てどきどきしているなんて。

私はやっと理性を取り戻し、慌てて立ち上がった。

「ごめんね。こんな夜に押しかけて。久しぶりに人と楽しく過ごせたのが嬉しくて、つい、いい気になっちゃったみたい」

急な私の言動に、彼は少し驚いたように目を見開いて私を見た。

しかしすぐに笑顔に戻って言った。
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