ほっとちょこれーと *【完】


「頼むから……昔の瑞希ちゃんに戻って」



郁哉にきつく抱きしめられる。



あーぁ……

あたし 何やってたんだろう。



「郁哉」

「………。」

「あたしね 鈍感なやつって大嫌い」

「え?」




「ずっと好きだったんだよ。気づけバカ」

「……え?!」



ほらね

そうやって驚く顔する。


だから鈍感って嫌い。

男の子って人の気持ちわかんないとこがイヤなのよ……


もう いいよ。




「行けばいいじゃん」

「………え?」

「うじうじしてないで行きなさいよ」



翼に向かって言う。



「その代わり」

「………。」

「あたしのこと 許してね?」

「………え」



あんたのこと許すから

翼もあたしを許して?



「友達でいいからこれからも一緒にいてね」

「……それでいいの?」


「うん」



あたしは笑う。

今までのことが何事もなかったみたいに。

とびきりの笑顔



「あたしにも大切なものがあるって気づいたんだ」


守るべきは自分じゃない

もっと大切なものがあるってわかった。



「だから翼はもういらない」



手放してあげるよ。





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