索漠
満月の明かりを頼りに足元に視線を落とすと、一度来た時には無かった足跡が付いている。足跡の大きさからして俺の物では無く、俺が足跡に気が付くと云う事は、相手も気が付いている可能性は高い。
 俺は背後の物音に細心の注意を払い二階へと上がる。
 真っ直ぐに伸びた廊下。左手には教室が見て取れる。間抜け面して廊下を歩くのは危険だ。最初は興奮状態で確認をして無かったが、安全の為にも部屋の中を確認して進む方が得策だ。
 俺は手近なドアをソッと開け、室内の音を聞き取る為に聴覚に神経を集中する。窓から入る月明かり。気配は何処からも感じ無い。俺は教室の中へと入り周りを見渡す。机には試験管とフラスコが並べられ、壁際には大きな人体模型の標本と鏡がある。部屋に置かれた道具を見る限り理科室の様だ。俺は漠然と部屋の中を眺め乍思案し、一つの方法を弾き出す。
―もう時間は無いんだ……
 頭に浮かんだ方法は贔屓目に見ても成功率は五割だが、賭けるに値する確率だ。俺は勝率五割の運命に身を委ねる覚悟を決め、左肩の部分をナイフで切り裂き部屋の外に出る事にした。

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