白い鼓動灰色の微熱

トラエシモノ

駅から五分ほど歩いたところで、彩世の家に着いた。

古い大きな家である。

塀の内側には車が三台ほどゆっくりととめられる庭があり、そこには彩世の車が一台とまっているだけで、あとはじかまきのパンジーが咲き乱れていた。

「綺麗」
 
咲は呟いた。

「これ、彩世さんが手入れするの?」

「手入れというか、種を撒き散らしているだけだけどね。

夏前には、朝顔の種をばら撒くんだ」

咲は少し感動的に、その話を聞き、庭を見た。
 
庭を抜け、家の割にあたらしい、二重ロックの扉を開けると、中からは新しい家の香りがした。
 
< 58 / 243 >

この作品をシェア

pagetop