リトルシークレット


「……はあ……。」
小さく素っ頓狂な声を上げる縁の前には、彼女の担任の青木が立っていた。

青木は眼鏡を拭きながら、職員室に呼び出した縁に言った。
「…いや、だから、お前はこの学年に進級してから数学の課題を一個も出してないのはどういうことだ?」
青木は静かに縁を睨み上げる
睨まれた縁は少しおどおどしながら、
「えっと…、えー……忘れてました…。」
「忘れてた…ねえ?俺は毎日注意の意を込めて黒板に未提出者古木と記載してた気がするだがな。」

「え!!あれ私の名前だったんですか!?」
ぶっ、縁の隣にいた友達蝉瀬麻緒が吹き出した。
その縁の答えにすかさず青木はチョップを食らわす。
「お前ってやつは…!そんなんじゃ進級は危ういぞ?」
青木のその言葉に眉が一瞬ピクリと動いた縁だが、すかさず、
「…すいません、今日中に今までの提出します……。」
と、言った


青木はその言葉を信じて、プリント10枚という今まで出した数学の宿題の束を縁に渡し、職員室から退場させた。
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