ありえないからありうる
「初めましてー。
ええと、葛城さん?」
「葛城千歳。なんか解んない事があったら、
隣の功治くんに聞くといいよ。」
「私に、ではないんだね。」
大瀬は「冗談だよ。」と笑う。
私は軽く相槌を打ち、前へと視線を戻す。
見られているという感じは否めないが、
気にしない。
「千歳、」
肩を叩かれる。
会って数分でここまで馴れ馴れしくされるのは、
初めての経験だ。下の名前呼び捨てとは何様だコイツ。
「下の名前呼び捨てにするのやめてくれない?
で、なに?」
「え、ゴメン。駄目だった?
前の学校では普通だったから…。」
ゴメンネ、と上目遣い。
キモチワルイ。
ああ、やっと解った。
私はきっと大瀬が嫌いだ。
見慣れないものだからって、変に緊張していただけだ。
私の望んでいた『変化』だからって、
ちょっと調子に乗っていただけだ。
「これからは苗字で呼んで。」
「わかりましたー。
で、本題なんだけど、この学校ってサッカー部ある?」
「ああ、あるよ。
詳しくは隣の席の功治君に聞いてね。
彼、サッカー部だよ。」