ティアラ2
知ってるも何も……。

オシャレしたい女の子なら誰もが憧れ、最終的にはそこにたどり着きたいと考える高級ブランドじゃない。

興味を持つあたしは、その場から1歩も動かず、次から次へと出てくるパッケージに見とれていた。

「見本のアイシャドウだけど。いっぱい余ってんだよ。……ほしいならあげるけど?」

見せびらかすかのように並べられた、スクリーンの試供品。

思わず、手が伸びた。けれど、透吾は「おっと」とつぶやき、触れさせないよう箱を自分のほうに寄せる。

「飲み終わるまでつき合ってくれたら、の話」

にやり、と口もとを緩ませて。

頭の中で天秤が揺れる。

飲み終わるまで付き合えば、手に入る。飲み終わるまで付き合うだけで……手に入るんだ。

「……少しだけなら」

結局、あたしは透吾が出した餌につられてしまった。
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