ティアラ2
「その中に入ってるピンクと赤、いい色だと思わない?」

目だけ向けているから、透吾は自分が見られていることに気づいていないのだろう。

外をぼんやり見つめる彼は突然、アイシャドウの色について話し出した。

「……ああ、少し落ち着いた色ですね。和服に合いそう」

慌ててコンパクトを見下ろす。そこには、10代や20代だけではなく、30代40代と幅広く好まれるような色が並んでいた。

「グラデーションで使っても綺麗だと思うけど……」

「あっ」

まだ透吾が話しているんだけれど、ふとあることを思い付いたあたしは、思うがまま鞄から化粧ポーチを取り出した。

そして、ガチャガチャ音を鳴らしながら、中から銀色のヘラとシャドウブラシを出す。

「このピンクと赤、混ぜると絶対キレイ」

ヘラでパウダーを削り取り、手の甲に乗せる。そして、慎重にその2色をブラシでかき混ぜた。

< 131 / 527 >

この作品をシェア

pagetop