ティアラ2

「おい、やる気あんのか」
カメラをおろし、腰に手を置いた透吾。

あたしはブスッとした表情のまま、彼をきつく睨みつける。
「んなものあるわけないでしょ!」


撮影初日の今日、あたしは約束通り、昼前に透吾の家に着いていた。

自宅に完備されているスタジオは広く、初めて入ったあたしは物珍しくて、グルリと部屋を1周したの。

分譲マンションに住んでいる理由は、きっとこういう部屋を作りたかったからだろう。歩きながらそう思ったんだ。

吉永さんや逢坂さんも立ち合いにきてくれて、スタッフも全員揃い、あたしはアカネさんや陽子さんと一緒に、昨日も入った準備室へ行く。

このときまでのあたしはやる気に満ちていて、目も生き生きしていたはず。だけど……。
< 389 / 527 >

この作品をシェア

pagetop