ティアラ2
透吾は冊子を棚に戻しながら、答える。ほんのり頬を赤らめて……。

「前に話した彼女」

考えていた言葉と重なる返事。頭に浮かんだ「まさか」な想像は、ピタリと当たってしまった。

「……」
戻された冊子にまた手を伸ばす。止めにくる透吾の声も無視して。

「このひとが、透吾の彼女?」
こんな偶然は存在するのだろうか?

不思議そうに「ああ」と返す、彼。あたしは冊子に挟まれた彼女の笑顔を見つめ、混乱の渦に飲み込まれていく。

透吾と別れた彼女が、あの笹野京香だったなんて……。


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