彼女ノ写真
ネガならきちんと補完している。




他、百五十二枚の写真ならば、最悪、焼き直して補おうと言う気がする───のかもしれない。




だけどあの写真に関しては、現に無くした今だって、そう言った気持ちがまったく湧き上がってくる気配すらない。




それはそうだ。




あれは───あの写真は、初めて僕がシキちゃんを撮った写真であり、初めて僕に笑顔を見せてくれた瞬間であり、初めて彼女が僕にくれた――プレゼントでもあるのだから。




僕としてはどうしても、無くす訳にはいかなかった。




これは単なる意地かもしれない。いや、きっとそうだろう。




解っているんだ。自分がいかに、ガキかと言う事は。




解っているからこそ、割り切れないんだろう。でも、それでいい。




とりあえず、出来る限り、アガくだけアガいてみたい。




何でも全力でやるべきだ。こんな、他人から見たらどうでもいい事だって。




───とは言え、いくら気持ちを強く持っていても、物理的にどうしようもない事もある。





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