スキの魔法
――そして、今日からのあたしはいつものあたし。
昨日のあの姿からは想像もできない、究極の地味女に。
いつものように、侑志を部屋で待つ。
――ガチャ。
「おはよ」
「おはよう。」
部屋に入って来た侑志は、やっぱりカッコいい。
スーツなんて着なくたって、何だって似合う。でもあたしは…
何故か俯いてしまう。
「…いつもの綾だな。」
顔を見なくても、侑志が笑ってるのが分かった。
「っ…こっちの方があたしには合ってるでしょ?」
顔を合わせることなく呟く。
「そうか?俺は昨日の綾の方が合ってると思うし、好きだな。」
侑志の言葉が、グサッと胸に突き刺さった。
そうだよね…。
こんな地味なあたしより、かわいい方が好きだよね。
…分かってたことなのに。
気持ちが少し沈んだ気がした。