ルージュの森の魔女
「………すまなかった」
慣れない反応をされたせいか、ぼそりとそっぽを向きながら謝る彼に、アリーナは少しだけ呆れたように微笑んだ。
「謝るのは私の方よ。あなたも私にそのことを聞きたかったのでしょ?」
そのこととは先ほどフードの男が話したダークライト(闇光の宝珠)のことである。
アリーナの問いかけに若干戸惑いとつつもレオドールは是と答えた。
それを聞くとアリーナは長い睫毛をふせ、次には紫紺の瞳に強い光を灯し、目の前でこちらの様子を伺うフードの男を見つめた。
「あなたたちがどこでその話を聞き、誰に頼まれたかはしらないけどその秘宝のことについて一切語るつもりはないわ。無論探しても無駄よ。あれの在りかは私でさえわからない…。――話しは終わったわ、一刻も早くここから去りなさい」
その言葉に目の前の男は悔しげにフードの下の顔を歪める。
チッと舌打ちをすると、いきなり懐から赤黒く禍々しい光を放った宝珠を取り出した。
「――それは…妖媚薬!?」
そこから放たれる香りにアリーナは眉をしかめる。
「左様…。しかし、ただの妖媚薬ではない。これはそれを結晶化しより強固なものに改良した妖媚珠である!!」
男は高らかに笑うと、それを前につきだした。
「さあ、ゆくのだ!我が僕(しもべ)たちよ!ちょうど帝国の小賢しい犬どもが消えるのにもいい機会だ。この際魔女も含めて魔物の糧となるがいい!」
その言葉を合図に、周りに潜んでいた魔物たちが一斉にアリーナたちに襲いかかった。
どの魔物も通常の魔物より数倍大きく、獰猛さが増している。
おそらく、今まで村を襲っていたのはこの魔物たちに違いないだろう。
「お前か!今まで村を魔物に襲わせていたのは!!」
レオドールの問いに男は嘲るように笑う。
「私の可愛い魔物を育てるには多くの人間の血肉が必要であろう?」
「貴様!!それだけの理由でっ……!!」
直後、魔物の鋭い爪がレオドールを襲った。
咄嗟に避けたレオドールは長剣で横から魔物を切り裂く。
魔物は瞬時に塵となり消えるも、次にはまた新たな魔物が襲いかかってきた。