リアル
「ここに百五十万ある。これで足りるか如何か分からんが……」
 命の値段。田中が定時した金額は、坂部には高いとも安いとも云えず曖昧に頷く。後は「スナック空」に行ってからでないと分からない。
「どの道、妻は自宅に引き取るつもりじゃったから、明日にでも、自宅に移して置くよ。もう、離れ離れは嫌じゃ……」
 坂部は、卓袱台に置かれた札束に視線を落とし大きく頷いて話し出す。
「結果が如何なるか……この選択が正しいか如何かは分かりませんが、田中さんの思いが、一つの答えを出します」
 迷い挫けそうな思いを拭い去る様にキッパリとした口調で坂部は宣言すると、田中は「有難う」と小さく呟き静かに涙を流した。

第五章 価値
 ゴツンと男の顎に右の拳を叩き込む。路地の裏。年の頃なら二十歳前後であろうターゲットの男を徹底的に痛め付ける。男は苦悶の表情を浮かべ「何処の組の者だ!」とダミ声を上げるが、私はその質問を無視して、ふらふらと倒れそうな男を再度殴り付け路地裏に男を転がすと、私はアバラ骨に目掛けて踵を振り下ろす。男の悲鳴。ボキリとアバラ骨が折れる鈍い感触が足の裏に広がり、男は其処で意識を失った。
「見事なもんだ」
 路地の先。街灯の影から聞き慣れた声が聞こえる。
< 54 / 95 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop