リアル
「社会を変えて行くのは、僕達の様な小さな力が集まった時だと思います」
「君になら出来るかも知れないな」
 私はそこ迄喋り酒を煽る。私には私の戦い方が見付かるだろうか。今は分からない。だが、今回の出会いを切欠に、私の中の何かが変わった事だけは確かだ。
「気持の整理は付いたみたいだね」
「綺麗にと云う訳じゃ無いですが、今回の事を無駄にしない為にも、前向きに訴えて行きます」
「良い覚悟だ」 
 私はその言葉を最後に立ち上がる。
「帰るの?」
 何時の間にかママが戻って来ていた。私はママに頷き一万円札を置いて外に出る。
 風が頬を撫でる。コンクリートジャングルの都会。この視界に映る何処かで、第二、第三の田中夫妻が居るのだろうか。索漠とした気分だ。私は、私の過去に拗ねて生きて来たが、坂部は私以上にきついかも知れない現実に直面し乍らも、立ち止る事無く前を向いて歩いて行く事を選んだ。
 お前は如何するんだ。私の中のもう一人が私に問い掛けて来る。息が詰まりそうに成る都会の片隅で、弱者はヒッソリと事実を語る事無く死んで行く。私は、私に出来る可能性を模索するかの様に夜の街を彷徨い歩く。だが、今の私は一人では無い。付き合いは浅いが、今は仲間が居る。私は普通の煙草であるピースを咥え、通い慣れた道を歩き「オールドパル」に向けて仲間に会いに行く事にした。
                   了
                                                       
                                                                 
                       











< 95 / 95 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

愚者
悠幸/著

総文字数/184,970

ミステリー・サスペンス374ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 過ちを薄める為に逃亡する。罪から逃げる事が正しい選択肢か如何か以前に、心の弱さが選ばせた選択肢。  折戸時雨は殺人罪から逃げる為に本名を捨て、日本全国を渡り歩き一つの街に腰を落ち着ける。  時が過ぎるのは果てしないが、振り返る事は一瞬で出来る。自分と云う核を捨てる事で気配を消し、時効を迎えた今も世間に一線を引いてしまう。  過去を問わないオーナーの下で喫茶店のマスターとして世間に溶け込むが、何処かで浮いてしまう。そんな逃げの人生だが、一人だけ友人がいる。互いに脛に瑕がある者同士だ。付かず離れずの距離感で付き合い、その友人である関がTVを眺めて嘯く。 「イジメ自体を無くすのは、略不可能と考えんとあかんのや」  イジメの特番が組まれた番組に対し呟いた一言が切欠に成り、錆付いた歯車が徐々に動き出す。  イジメを否定する事は容易だが、無くす事は不可能だ。理不尽な言葉が理不尽で無いと思い知らされる事件が次々と起こり、逃げる事が人生だと思っていた時雨の中にある何かが動き出した。
復習
悠幸/著

総文字数/27,245

ミステリー・サスペンス42ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  高濱将之は、妻と子の三人家族で暮らしている。然したる野心も無ければ欲望も無い、極有り触れた平凡な生活に満足をしている。人には、各々に器が有り、自身の器を越える行動は身を滅ぼすと云うのが高濱の人生哲学であり、本人もその考えに満足をしている。だが、ある日を堺に、その考えをぶち壊さなければ成らない事件に襲われる。最愛の家族の惨殺事件。殺人犯は、意外な所から捕まるが、高濱の苦悩は、寧ろ犯人が逮捕された後の法が、高濱を祭悩ます。残された遺族の思いとは裏腹に進む裁判。高濱は、残された遺族として何が出来るかを思い悩み、一つの結論に行き着き、破滅の道へと自分を追い遣る。
索漠
悠幸/著

総文字数/3,113

ミステリー・サスペンス5ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
このお話の内容は 少年犯罪と法律の制度の矛盾に対して、私なりの見解を出した作品です。 お楽しみ頂けたら幸いに思いますです。後、前作と違い短いですw

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop