本当に愛おしい君の唇
「ええ」


「じゃあ、そっちの高層階の部屋の方に泊まるから」


「ありがとうございます」


 ホテルマンは一礼し、治登が宿泊の予約をすると、与えられたカードキーを手に持った。


 直美の手を握り、連れていく。


 エレベーターで上階へと向かいながら、言い合う。


「昼間だけど、シャワー浴びようか?」


「もう?」


「うん。だって、汗掻いちゃっててさ。今日の東京は蒸し暑いからな」


 治登は汗ばんだ感じがしていて、思わず着ていたワイシャツをバタバタと煽(あお)る。


 ネクタイこそしていないが、ほぼ正装状態だった。


 今朝家を出るとき、有希に離婚届を突きつけ、


「ここに署名と捺印してくれ。これで俺たちの関係は終わるからな」
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