本当に愛おしい君の唇
最終章
     FIN
「何か付けられてる感じがするんだよな」


「付けられてる感じ?」


「ああ。尾行ってやつだけど」


 治登が直美にそう漏らす。


 そして後方を見た。


 確かに人通りで、とても混雑しているので、誰が自分を付け狙っているのかまでは分からない。
 

 ただ治登は歩きながら、考えていた。


 やはり誰かが俺を狙ってると。


 しばらく会社の方向に向けて歩いていると、相変わらず背後に気色悪い感覚を覚える。


 だが、出社しないといけない。


 治登はさっきホテルの部屋を出る前に交わした、直美との熱いキスを思い浮かべていた。


 口付け合い、唇表面にあった柔らかい感触を覚えている。
< 166 / 171 >

この作品をシェア

pagetop