本当に愛おしい君の唇
第13章
     13
「食事してくるから」


「分かりました。午後の分の書類はデスクに置いておきます」


「ああ、頼んだよ」


 秘書課から専務室に出向いていた今井彩香が頷き、治登は部屋を出る。


 こう見えて、結構疲れているのだ。


 さすがに全世界に拠点を持つようになった大手商社の事実上の元締めはきつい。


 治登が先頭に立って働かないと、社員は誰も付いてこない。


 それは十分すぎるぐらい十分に分かっていた。


 どうやら古賀原は変な新興宗教に嵌まっているらしい。


 仕事もろくに出来ないし、読むものといえば週刊誌やそういった宗教団体の機関紙だった。


“何考えてんだ?この男は”


 治登は苦い顔をしていた。
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