猫になった僕
言葉には力があるんだよ。

 だから悪いことを言ってはいけないよ。

 まちがったことを言ってはいけないよ。

正しいことを言えば正しくなる。

 楽しいことを言えば楽しくなる。

「みんながそうすれば、みんながしあわせになれるんだよ。」

 僕はテレビの偉い先生が言ってたことがその時やっとわかった。


本当だったんだってわかったんだ。

 海に吹く風が、僕の顔に強く吹いた。
僕はそのおじいちゃんをじいっと見つめてしまった。 
 おじいちゃんが僕から離れようと体の向きをかえたとき、僕と目があった。

言葉の力が本当だってわかった僕は、それを教えてくれたおじいちゃんから目を離すことができなくなっていた。

 強い風が僕とおじいちゃんの間を走ってた。
僕の足についている銀色の車輪にも強い風が吹いて、これはなあにってヒューヒューと音を立ててた。

 おじいちゃんは僕を見てニッコリ笑うと男の子が風にさらわれないようにとしっかりと抱っこして、レストランに入っていった。

 僕の目がおじいちゃんを追いかけた。
きっときっと、この大きな大きな橋をつくろうって初めに言ったのは、あのおじいちゃんなんだって思ったんだ。

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