猫になった僕

お部屋の外へ!

マリ姉ちゃんに起こしてもらった僕は、銀色の車椅子の銀色の車輪を手で回してマリ姉ちゃんと一緒におやつを食べに行ってしまった。

 僕もマリ姉ちゃんも猫になった僕のことには全然気づいてくれなかった。

 猫になった僕は、マリ姉ちゃんが少しだけ閉め残した戸をスッとすり抜けて、僕とマリ姉ちゃんの後を追った。

  
 僕はあおぞらの郷の廊下を慎重に歩いてみんなでおやつを食べる食堂にむかった。
あおぞらの郷は僕のもう一つのお家。
僕には二つお家がある。

パパと、ママと、お姉ちゃんと一緒に過ごすお家と、僕とあおぞらの郷のみんなで過ごすお家。

あおぞらの仲間の中には「家族に見捨てられてここに入れられた。」なんて言う人もいるけど、僕はそうは思わない。

ママやパパやお姉ちゃんと離れて、淋しいなって思うこともあるけど、僕は一人前の大人の男だから大丈夫。

それにお誕生日とクリスマスには必ずみんなで僕に、会いに来てくれる。

夏休みやお正月にはお家にも帰れる。

僕はそれがとても楽しみなんだ。

いつまでもママとパパと、お姉ちゃんが元気でいてくれたらそれでいい。

僕にはママやパパやお姉ちゃんと、あおぞらの仲間とお世話をしてくれる優しいお姉さん達がいるんだ。

あおぞらの仲間はたくさんいる。
前にあおぞらの郷のお兄さんが、あおぞらを見学に来た人に言ってた。

「あおぞらの郷には入所五〇床、ショートステイ用ベット四床の計五四床が用意されております。」 って。

あおぞらには、いろんな仲間がいる。

僕よりもずっと若い女の子や僕よりもずーっと年上のおじいちゃんもいる。

片方の手と足がうまく動かないおばあちゃん、杖をついて歩くおじさん、いろんな車いすに乗ってる人がたくさんいる。


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