蜜月 -love is blind-【BL】
「――俺だったら」


 ふい、と俺から視線を反らした神宮は、グラウンドの方に向かって歩き出した。


「自分の傍に、自分より頭の良い奴が居たら、利用するけどね」

「利用、って……」

「使えるものは何でも使え、ってことだよ。自分の為にね」


 頭のイイヤツってのは、やっぱどっか変わってんだな。

 咲都は真面目すぎるけど、コイツはなんか変だ。

 今までに会ったことの無いタイプだと思う。


 屋上のフェンス越しにどこかを見詰める神宮の黒髪を、湿気を帯びた風が揺らしていく。

 なぜだか分からないけど、その後ろ姿が妙に淋しそうに見えて、俺は思わず神宮を呼んでいた。

 顔を掠める髪を掻き上げながら振り返った神宮は、やっぱり無表情で。


 その瞳は、何を映しているのか。

 その瞳には、どんな世界が見えているのか。


 俺が青だと思ってるモノが、神宮には赤なんじゃないか、とか。


 そんな、どうでもいいことが。

 考えても、大して意味の無いことが。

 無性に、気になる。


 気になって、気になって、仕方ない。


 俺さえもその目には映っていないのかと思うと、何が何でも俺を見て欲しくて。

 もう一度神宮の笑顔が見たいと思った俺は、軋む身体を無理矢理動かして、立ち上がった。
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