飛べない鳥
『飛べない鳥なんて…この世にいない…飛べない鳥には、ただ必要なものが足りないだけなんだ…
俺も飛べない鳥の仲間だ…』


次々に溢れだす涙。


その涙は、下に落ちることなく、儚く消えた。



『必要なもの…?』



『…人間にも鳥にも必要なものがある。まだこの俺には…ないもの』



『それって…』



唯がその答えが分かったようだ。



でも俺は聞けなかった。


丁度いいところで、
大音量の目覚まし時計が鳴り響いたのだ。



『…夢…』


俺は頭を掻きながら、
体を起こした。


何だ、あの夢は?


大音量の目覚まし時計を止め、もう一度あの夢を思い出していた。



飛べない鳥には必要なものが足りない?


一体なにが足りないというのだ?



そして、俺は飛べない鳥と同じ?



俺は自分自身に何が足りないかを必死に考えた。



この答えが分かるのは、
まだまだ先だった…
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