飛べない鳥
───………

──……



『なぁ、唯…』



ここは何処だ?


真っ白で景色がない。


進む道がない。


俺は一歩も動く事が出来なかった。


でも隣には、唯の姿があった。


唯は今にでも泣きそうな顔をして、俺を見つめていた。


俺はそんな唯を抱きしめることすら出来ないでいた。

ただ自分の素直な気持ちを押し殺し、唯を見つめていた。



『遥斗─……』



か弱い声で俺の名を呼ぶ。


『…俺は人間が大嫌いだ。この世界に生まれてきたことが俺の人生の汚点だ─…』



俺の目に、何かが溜っていく。


次第に唯の顔が滲みだした。


すると唯が俺に手を差し出した。



『遥斗…』


もう一度呼ぶ唯。


俺はぐっと唇を噛み締め、枯れたはずだった涙を流してこう言った。
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