飛べない鳥
『無理だって…』


俺は美咲の手を離し、
美咲を置いて先に行こうとした。



階段を一歩一歩上っていく。


一段一段上がるにつれ、
ひんやりと冷たい空気が感じられる。



美咲は諦めたのか、
いつの間にか俺の背後から姿を消していた。



俺はほっとし、
屋上のドアに手をかける。

そして右に回した。



毎回同じ景色が広がる。


そんな景色に俺は飽きもせず、この屈託のない青空を見上げるんだ。



そして辺りを見渡す。


今日は俺より先に先客がいたようだ。



長いストレートの髪を揺らしながら、遠くを見つめていた。



そしてその人はゆっくり俺の方に振り返る。



『おはよ、遥斗』



『…はよ、唯…』



そして今日も学校が始まる。
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