飛べない鳥
『分かるだろ…あんな避けられたらもう無理だろ…』


蝉の声が煩くなる。
風速はゼロ。


空は快晴。


響の精神は…雨。



『分かんねぇだろ?聞いてみないと分かるわけねぇって。一回聞いてみろよ』



すると響の体がずるずると下がっていき、響はその場にしゃがみ込んだ。


そして顔を埋めて呟いた。



『怖いんだよ…美幸に何言われるか…怖いんだよ…』



『響…』



確かに怖いよな。
相手に自分のことをどう思っているかと聞くのは。


でも響はそれでいいのか?


先生が好きなんだろ?
愛してるんだろ?


あの気合いはどこに言ったんだよ。



『怖くても聞けよ。逃げてばっかじゃ後悔するだけだぞ』



俺は響を見下ろし、
響が立ち上がるのを待った。


立ち上がって、先生の元へ走っていく響を想像していた。
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