飛べない鳥
蝉の煩い鳴き声が耳に入ってくる。


そのせいで唯の声が聞こえたにくい。


鳴きやんでくれよ。
俺は唯の声が聞きたいんだ。



夏の風は生温い。
でもそれが涼しいと感じるんだ。



唯の髪の毛が風と共になびく。


髪の毛、一本一本が綺麗で指を通したくなる。



沸々と煮えたる、俺の欲望。




『いつ行こうか?』



俺は視線を下にずらした。
照れた顔を隠すために。



『今週の日曜日がいいな!』



『分かった。日曜日な?また連絡する』



俺はこう言って屋上から姿を消した。



どくんどくんと唸る心臓を押さえて、ゆっくりと階段を下りていく。


そして壁に持たれかかり、一旦自分自身を落ち着かせた。



なぁ?ちょっと自惚れてもいいか?


俺と唯は…気持ち繋がってるのかな?



俺は…繋がっていると思うんだ。
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