飛べない鳥
名前の知らない彼女も今の俺を見ていてくれているかな?



あなたにお礼を言いたいな。


名前だけでも聞いておけば良かった──…



俺は唯をこちらに向かせ、再び抱いた。


唯の温もりをいつまでも感じていたかった。



『唯…こんな俺でいいかな?頼りないけど…ずっと傍にいてくれる?』



俺は唯のさらさらした髪の毛を撫でながら、唯の答えを待った。



俺を抱く、唯の腕の力が強くなった。



『当たり前じゃない…遥斗は私の初恋の人なんだから…私もずっとずっと…ずっと…遥斗の傍にいたいよ…』



俺はゆっくりと唯を離し、顔を傾けて目を閉じ、唯の柔らかい唇に自分の唇を押し当てた。


一瞬のキス…


それだけで十分だった。


俺は唯の耳元でこう囁いた。



今日はもう言わないよ。

ちゃんと聞いていてね?



俺の気持ちを──……






『愛してる…』
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