飛べない鳥
屋上に続く階段を上って行く。


下を向いたまま歩いていた俺は、その先に人がいる事に気付かなかった。


気付いた時は、その人達との距離はわずか三メートル。


イライラしていたせいか、その人達の話し声など聞こえなかった。


俺はゆっくり顔を上げ、
その人達を見た。



『菊地さんは…彼氏とかいるの?』


『いないかなぁ…』



『じゃあさ…あの…』


俺はその人達のやりとりを黙ったまま見ていた。



この階段を上がらなければ屋上へは行けないのに、
道が塞がっている。


また俺のイライラが積もった。



男はきっとこの菊地って女に興味があんだろ?



…菊地?


俺は菊地という女の方を見た。


菊地という女は、俺と同じクラスの菊地唯だった。



菊地唯は俺の存在に気付いた。



『橘君…』
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