飛べない鳥
透明な可愛らしい声で俺の名を呼んだ。


『そこ通らして』


『あっごめんね…』


『別に』


俺は真ん中を通り、
屋上へと向かった。



やっぱり菊地唯はモテるんだな。


俺には関係ねぇけど。



これが俺と唯の初めての会話だった。



─キィー…


古びたドアから鳴る、
背筋がぞっとする音。


俺はその音になにも反応せずドアを開けた。


広がる青空。


俺は寝転び、空をいつまでも見ていた。



一人が楽だ。


一人が好きだ。



『はぁ…』



人間が苦手だ。


人間が嫌いだ。


苦しい、苦しい。



この世界から消えたいと、最近ずっと考えてしまう。


この世界に、夢や希望など何もない。
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