飛べない鳥
『ママ…ママ…』


周りには母親の姿がない。
見えるのは雪景色。


『遥斗…何か見付かった?』


後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。

俺は勢いよく振り向く。


『ママ…』

そこには母親がいた。

母親の姿を見たらホッとした。


『ママいなくなったのかと思った。良かった~』


俺は母親に精一杯の笑顔を見せた。

本当はすごく悲しかった。
でも俺は無理矢理笑顔を見せた。


『ねぇ遥斗?約束しようか?』


母親が小指を立てて、
俺の目の前に差し出した。

『やくそく?』


『そう、約束。
遥斗、必ず迎えにくるから、いいこにしててね?お願いね?』


『…うん?いいこにするよ??』


訳も分からず返事をし、
自分の小指を母親の小指に絡ませた。


『ゆびきりだね!』


『そうね?さぁ、遥斗?
行ってらっしゃい?』


俺は小指を離し、再びドアの方へと走っていった。



これが…母親の最後の笑顔だった──……
< 7 / 354 >

この作品をシェア

pagetop