華の咲く場所

それから何日かして、思い出したように尋がくれた鍵の首飾りを紅藤様に見せて、金属の箱の鍵を開けた。

何故忘れていられたのかはよく分からないけれど、それを見せた時、紅藤様はとてもびっくりして私を見て、やっと謎が解けた、と言って、箱が開くところを感慨深げに見ていた。

中からはとても綺麗な意匠の、輝きを放つ石がいくつもちりばめられた指輪が出てきた。
こんなに綺麗なものが、貴方のお仕事なんですのね、言ったら、そんなに褒められるほどのものではないよ、と初めて照れた彼を見た。

そして、尋の代わりというわけではないけれど、ごめんなさい、ありがとうと言って、その指輪を紅藤様の右手の薬指にはめてあげた。

左手の薬指は私のものだ、私とおそろいの指輪がはまる指だ、いくら仕事のものといっても嫌だったから右手にした。

そのすぐあとで、私は尋からもらった首飾りを、紅藤様は尋から奪った金属の箱と尋を撃ったピストルを、捨てた。

そんなものを持っていても悪い悪魔につかまってお互いが傷つくだけだと、お互いが愛し合う上で尋の思い出が付きまとうものは不要だと、嫌というほどわかったから。

やっと、見えない何かから解放されたような気分になった。

彼の眼鏡いれだけはそのまま使われていたけれど、彼は何の意味もなくそのまま使っていたようだけれど、私が嫌で、新しい、今までのものよりも上等な眼鏡いれを彼の誕生日に贈ってあげた。

もちろん、それを有無を言わさず使わせて、金属の箱が隠れていた眼鏡いれは破棄した。




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