Ghost Lovers

終いには足の力や腕の力が抜けて、
その場に立っていられなくなった。

――どうしてこんな、突然?


「あ…あ、あれ…ぇ…?」


そのまま、視界が霞んだ。
目の前が揺らめいて、ぐるぐると回る。



「貴方は…”見えている”のだね…。」



声が、頭の中で響いた。


全身の力が抜けて、ガクッと膝から倒れこむ。
遠のく意識と、見えなくなる視界の中で
男性の笑顔が見えた。

その笑顔が―――歪む。



(この人…人間じゃ、ない…?)


気がついたときは時すでに遅し。

私は何もできないまま、ゆっくりと近づいてくるように見える手を
振り払うことさえできない。


凜の言葉が、今更蘇った。


< 113 / 169 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop