百の愛の言葉よりも、一輪の花を
思わず笑ってしまった。
とうとうそう来たか。

受け取るときに一瞬触れた夫の手は、冷たく冷え切っていた。
渡された花から夜の冷気が伝わってくる。

駅から家までの徒歩5分の帰り道、夫が花を持って帰る口実を考えながら、できるだけゆっくり歩いている様子が目に浮かんだ。

道で拾ったことにするまでに、一体何分かかったのだろう。

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