歌って聞かせてよ。
私はその光景を微笑ましく見ていた。


あれこれと文句をいうわりにはお母さんに優しい光輝君。



心配かけさせたくないんだね…。



「四ノ宮さーん、診察室の前で待機してもらっていいですか?」


看護婦さんが光輝君を呼びにきた。



「あ、それじゃ、桃ちゃん、行ってくるわね。」


「あ…はい!」


光輝君のお母さんにいきなり言われビックリした。



「げ…母さん、ついてくんのかよ。1人で行けるっての。」



「いーじゃない。ついでよ、ついで。」



さっきまで泣いていたお母さんも光輝君の前では明るい。




…親子だなぁ。


2人とも、お互いに心配かけないように明るく振る舞ってる。


2人が出ていった病室で私は1人、窓から空を見上げていた。



まだ明るい空に、月が見える。



私が人間になれたのは光輝君と話がしたかった…


っていう理由だけ?



私、ずっとこのまま人間の姿でいられるのかな…。



もしかしたら…





またもとの木に戻っちゃうのかもしれない。



だとしたら、私に残された時間はあと…



どれくらいなんだろう。
< 24 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop