歌って聞かせてよ。

内科の先生がいる部屋までの廊下を歩いて、受け付けまで行こうと角を曲がろうとした時、



｢ですから、光輝君には…。｣



｢そうですか…。｣



ん？光輝君？？



私は思わず踏みとどまり、その会話をしていた2人をまじまじと見ると、光輝君をいつも見てくれている叔父さん先生と見たことないおばさんがいた。



…もしかして……。

光輝君のお母さんかな。



あれ？

…でもなんか様子が…。






よく見ると…





光輝君のお母さんは泣いていた。







それを見た私は嫌な感じがした。

光輝君の身に何かあるのかな…。



取りあえず、私は急いで保険証を提出しに行った。


それから走って病室に戻ると、

｢あら、可愛い子。光輝のお友達？｣


やっぱり。

さっきの人は光輝君のお母さんだったんだ。



｢あ、こんにちは。桃っていいます。｣

｢あ！あなたが桃ちゃん？先生や看護婦さんから聞いてるわぁ。｣


｢な、何を聞いてんだよ！｣


横にいた光輝君が少し頬を赤くして聞いた。


｢いつも光輝君のお見舞いにきてくれている子がいるって。｣

｢あ…なんか、勝手に…すみません。｣


謝った私。



｢あ、違うのよ。そうじゃなくて、あなたのおかげでこの子、よく笑うようになったって聞いたの。ありがとうねぇ。｣


私のおかげ？

そんな贅沢に思っちゃっていいのかな…。



｢私こそ、光輝君に元気もらってるので…。｣

と、微笑んだ。


｢母さん！恥ずかしいだろ！挨拶の仕方が…俺がめちゃくちゃ子供みてーじゃん。｣


｢あら、あなたはまだ子供よ？｣


｢うっせぇな。｣


ムスッとなる光輝君。