愚者
 私は店に置いている固定電話からタクシー会社に連絡をする。数回のコールでタクシー会社に繋がった。送迎の為に住所を伝えると、事務所は近隣の車を手配するので五分程で着くとの事らしく、暫く待っていてくれと伝えて来た。私は頼むと云って通話を切り、視線を母親に向ける。
「今、タクシーを呼んで置いた。それに乗って帰れば良い」
「えっ?」
「同じ過ちを繰り返したいのか?偶然私があの場所に居たから無事に済んだんだ」
「は、はい……」
「それより良く考えるんだよ」
「はい……有難う御座います」
「気にする事はないさ」
 私が会話の切り上げの意味を示すと、遠くからヘッドライトが近付いて来た。如何やら予想以上に早くタクシーが来た様だ。私はドアを開け、店の外に止まっているタクシーに近付き軽くウィンドウを叩き、運転手に五千円を手渡し、後ろに付いて来て要る母親に振り向き「気を付けて帰るんだよ」と云いタクシーに乗せる。
「色々と、有難う御座いました」
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