愚者
第七章 歯車
 朝陽が窓から差し込み部屋を優しく照らし出す。葵は先日起きた怖さが身体から抜けきる事が無く、学校へと向うのが辛く感じる。母は帰宅すると直ぐに自分の部屋へと入って行った。擦れ違いの毎日。葵は悲しい気持を胸に抱き乍ベッドから起き制服へと着替える。
 刻々と時間が過ぎる程に気持は酷く落ち込んで行く。学校へ行く事が恐怖に成っている。だが、母の手前学校へ行かないと云う事は出来無い。逃げ出したい現実と、逃げては駄目な現状。葵は心が悲鳴を上げるのを押さえ込む様に、テーブルに置かれているパンを齧り乍珈琲を入れて一口飲み、バタバタと準備をして自宅を出る。
―やだな
 葵が幾ら大人に近い考えを持っているとは云え、矢張り子供だけに思考を細分化する事が出来ず、又、母に迷惑を掛けたく無いと云う思いから切り出す事も出来無い。悪循環なのは分かっているが踏み込む勇気が出せない。
晴れ渡る秋空の下、葵は心の重りを抱えた侭でトボトボと学校へ向けて歩いていると後ろから声を掛けられた。
「やあ」
 小夜子が爽やかな笑顔を浮かべて笑っている。この子は何時もどんな事が有っても自分のペースで生きているのだろうかと葵は心底関心し乍小夜子を見る。
「おはよう」
「朝から元気がないね。そんな事じゃ、今日一日を乗り切る事等出来無いぞ」
「そんな事はないよ」
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