愚者
葵は先日の出来事を小夜子に伝えるか逡巡するが、結局止めて置く事にした。これ以上被害者を増やしたく無いと云う思いが強く心に働き掛ける。
「ほら、急がないと遅刻するじゃないか。マイペースも良いけど、今は急ぐ時だ。僕は遅刻は嫌いだからね」
「あ、うん……」
徐々に足早に成って行く小夜子に触発される様、葵も足早に成る。小夜子が傍に居るだけで楽しい気持に成るのが不思議に思えて来る。心が惹かれている。恐らくこの表現が一番適切なのかも知れない。葵は小夜子の後ろを追い掛ける様に学校迄小走りで走り、校門を潜ると教室迄一直線に駆け上がる。呼吸が少しだけ荒くなり心拍数が上昇する。葵は急いで席に座り、鞄を机の横のフックに引っ掛け、鞄の中から教科書を取り出し机の中に手を入れると、指先に鋭い痛みが走った。
「きゃっ!」
短い悲鳴が小さく出る。だが周りのざわめきで葵の声は掻き消されている。葵は机の中から手を取り出すと、指先に血が滲んでいた。視線を机の中に向けると、手を突っ込んだ場所にカッターの刃がテープで取り付けられていた。
「ほら、急がないと遅刻するじゃないか。マイペースも良いけど、今は急ぐ時だ。僕は遅刻は嫌いだからね」
「あ、うん……」
徐々に足早に成って行く小夜子に触発される様、葵も足早に成る。小夜子が傍に居るだけで楽しい気持に成るのが不思議に思えて来る。心が惹かれている。恐らくこの表現が一番適切なのかも知れない。葵は小夜子の後ろを追い掛ける様に学校迄小走りで走り、校門を潜ると教室迄一直線に駆け上がる。呼吸が少しだけ荒くなり心拍数が上昇する。葵は急いで席に座り、鞄を机の横のフックに引っ掛け、鞄の中から教科書を取り出し机の中に手を入れると、指先に鋭い痛みが走った。
「きゃっ!」
短い悲鳴が小さく出る。だが周りのざわめきで葵の声は掻き消されている。葵は机の中から手を取り出すと、指先に血が滲んでいた。視線を机の中に向けると、手を突っ込んだ場所にカッターの刃がテープで取り付けられていた。