愚者
意識が朦朧とする中葵は眼を覚ました。腕時計の時刻は夕方の十六時を回っている。午前中意識を失ってから、授業が終わる夕方迄完全に記憶が無い。否。どちらかと云うと、忘れたい記憶だけは確りと頭に残った侭だ。眩暈がする中、葵がベッドから起き様とすると、保険医の女性が優しく鞄を差し出して来た。
「これ、お友達が届けてくれたわよ」
「あ、有難う御座います……」
「何があったのか分からないけれど、大丈夫?」
「あ、はい……大丈夫です」
気軽に云える内容の類では無い。葵はベッドから下りて、ふら付く足取りで鞄を受け取り帰宅する事にした。今の状態で教室に戻る気には成れない。小夜子には悪いが、今は会う人間の全てに悪意を感じてしまう。
「大丈夫?」
「はい……」
声が掠れる。葵は不安定な精神状態の侭で廊下を歩いて下駄箱に向かい、校庭を抜けて自宅へと向けて歩いていると夕日の先に人影が見える。
―誰?
視線の先。夕日を背に受けて立っているのは、校舎裏で葵を責め立てた同じクラスの男子生徒だった。周りに人の通りは殆ど無い。葵は恐怖心で足が震える。何か嫌な事が起きると本能が警鐘を鳴らす。
「面白い事をしてるんだな」
「これ、お友達が届けてくれたわよ」
「あ、有難う御座います……」
「何があったのか分からないけれど、大丈夫?」
「あ、はい……大丈夫です」
気軽に云える内容の類では無い。葵はベッドから下りて、ふら付く足取りで鞄を受け取り帰宅する事にした。今の状態で教室に戻る気には成れない。小夜子には悪いが、今は会う人間の全てに悪意を感じてしまう。
「大丈夫?」
「はい……」
声が掠れる。葵は不安定な精神状態の侭で廊下を歩いて下駄箱に向かい、校庭を抜けて自宅へと向けて歩いていると夕日の先に人影が見える。
―誰?
視線の先。夕日を背に受けて立っているのは、校舎裏で葵を責め立てた同じクラスの男子生徒だった。周りに人の通りは殆ど無い。葵は恐怖心で足が震える。何か嫌な事が起きると本能が警鐘を鳴らす。
「面白い事をしてるんだな」