愚者
担任は激昂した侭で教室を後にする。一同が呆気に取られて静まり返る中、葵は悲しさの余り涙を堪える事が出来ずに泣き出す。理不尽にも程がある。若し小夜子が間に入らなかったらと思うと、恐怖で身体の震えが止まらない。肩を抱いて震えていると、遠くからヒソヒソと話し声が聞こえる。その内容は葵に取っては聞きたく無い類の内容に成り、明らかに蔑んだ視線が肌に突き刺さるのが分かる。
―如何したら良いの?
葵は混乱する頭の中で俯いていると、不意に肩を叩かれた。
「顔色が悪いね。保健室に行こう」
小夜子が優しく話し掛けて来る。葵の瞳に映る今の教室は悪意に満ちた世界だ。誰がイジメの加害者に成っても可笑しく無く、正直意識が遠のきそうだった。そんな際に周りの眼を気にせず異議申し立てをしてくれた小夜子の登場は心強かった。葵はふら付く足取りで小夜子に連れられて教室を出て行く。視界がグニャグニャと歪む。最早まともな精神状態では無いのは自分でも分かるが、これ以上考えたく無いと云う思いの方が大きい。
「もう直ぐ保健室だからそれ迄の辛抱だよ」
小夜子が優しく微笑んでくれる。葵は心持ち落ち着きを取り戻し乍も釈然としない思いが大きい。それは至極当然の事だ。担任からの誹謗中傷の内容は常軌を逸している。葵は眩暈がする中小夜子に連れられ保健室に入り、その場でふっと意識を失った。
*
校舎の屋上。望遠レンズを抱えた一人の男が獲物を狙うハンターの様に息を潜めて撮影をしている。立ち入り禁止と書かれたプレートが虚しく風で凪いでいる中、男は嬉々とした笑顔を浮かべ葵が寝ている保健室を盗撮している。
モニターの中に映し出される葵の顔色は、カメラ越しにも分かる位に白く不健康な色をしている。誰も居ない屋上。風が吹き抜ける中で男は好奇の視線を込めて葵を盗撮し続けていた。
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―如何したら良いの?
葵は混乱する頭の中で俯いていると、不意に肩を叩かれた。
「顔色が悪いね。保健室に行こう」
小夜子が優しく話し掛けて来る。葵の瞳に映る今の教室は悪意に満ちた世界だ。誰がイジメの加害者に成っても可笑しく無く、正直意識が遠のきそうだった。そんな際に周りの眼を気にせず異議申し立てをしてくれた小夜子の登場は心強かった。葵はふら付く足取りで小夜子に連れられて教室を出て行く。視界がグニャグニャと歪む。最早まともな精神状態では無いのは自分でも分かるが、これ以上考えたく無いと云う思いの方が大きい。
「もう直ぐ保健室だからそれ迄の辛抱だよ」
小夜子が優しく微笑んでくれる。葵は心持ち落ち着きを取り戻し乍も釈然としない思いが大きい。それは至極当然の事だ。担任からの誹謗中傷の内容は常軌を逸している。葵は眩暈がする中小夜子に連れられ保健室に入り、その場でふっと意識を失った。
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校舎の屋上。望遠レンズを抱えた一人の男が獲物を狙うハンターの様に息を潜めて撮影をしている。立ち入り禁止と書かれたプレートが虚しく風で凪いでいる中、男は嬉々とした笑顔を浮かべ葵が寝ている保健室を盗撮している。
モニターの中に映し出される葵の顔色は、カメラ越しにも分かる位に白く不健康な色をしている。誰も居ない屋上。風が吹き抜ける中で男は好奇の視線を込めて葵を盗撮し続けていた。
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