愚者
男子生徒は葵と擦れ違い様に「ヤリマン」と一言残して去っていた。見に覚えの無い誹謗中傷を受けている自分が情け無く成るが、噂話と云う物は兎角広まり易く、学校と云う閉鎖された空間では伝播するのは恐ろしく早い。今、葵の眼に見える全ての人間は、自然と自分を蔑んでいる様に見えて来る。だが弱音を吐く事は出来無い。母も生活の為に頑張っているのだ。葵はふら付く足取りで教室へと向う。
―小夜子に会えば、元気に成れる
葵の心の支えは小夜子一人だ。その存在の大きさを感じ乍、教室のドアをそっと開けて教室を見渡す。自然と目線は小夜子を探す。だが教室に小夜子の姿は見えない。葵は落胆し、トボトボと自分の席に向って歩いて行くが、全身がチクチクと痛みを覚える。そこら中から突き刺さる好奇の視線。葵は悲しみで気が狂いそうに成るのを必死に押さえ込み机を見ると愕然とした。机の上に何か鋭利な物でも使ったのか「バイタ」とカタカナで大きく刻み込まれていた。執拗な嫌がらせ。葵は軽く机の上を撫ぜると、切り刻んだ屑が指先に付くのが分かる。
―もう、イヤだ!
―小夜子に会えば、元気に成れる
葵の心の支えは小夜子一人だ。その存在の大きさを感じ乍、教室のドアをそっと開けて教室を見渡す。自然と目線は小夜子を探す。だが教室に小夜子の姿は見えない。葵は落胆し、トボトボと自分の席に向って歩いて行くが、全身がチクチクと痛みを覚える。そこら中から突き刺さる好奇の視線。葵は悲しみで気が狂いそうに成るのを必死に押さえ込み机を見ると愕然とした。机の上に何か鋭利な物でも使ったのか「バイタ」とカタカナで大きく刻み込まれていた。執拗な嫌がらせ。葵は軽く机の上を撫ぜると、切り刻んだ屑が指先に付くのが分かる。
―もう、イヤだ!